月のうろこを食べるへび

マトモじゃないわたしがマトモに生きようとする奮闘記。夢の記憶、どこかで見た景色、ふと感じたこと。思うままに書いていきます。

盲目的と意識的、走ると歩くと立ち止まる

順調にいっているように見えたが、

それは幻想だった。

 

私は敢えて盲目的に育った。

それが人のためになると思ったから。

 

声に呼ばれても

美しい光が見えても

気づかないふりをした。

 

そうすべきだと思い込んでいたから。

 

自分にはその声は関係ないし

光など私なんかに縁のないところ。

 

そう思っていた。

 

その声、その光こそが

本当は必要だったと気づくのは

ずいぶんと後になってから。

 

いざ、自分ひとりで歩くことになり

自分の目で見ていなかったと

初めて知る。

 

なんとか歩いてみた。

 

最初は怖かったけど

どんどん楽しくなってきた。

 

少し寄り道すれば

見たこともない景色が見える。

 

少し走り出せば

先に走っているたくさんのひとがいて

声をかけると答えてくれる。

 

まったく新しい世界だった。

 

自分には何でもできると思えた。

 

どこへでも行けるのが楽しくて

力の限り、縦横無尽に走った。

 

少し無茶もした。

イバラのトゲも気にならなかった。

 

どんどん走った。

 

走って、走って、走りまくったら

だれも周りにいなくなっていた。

 

あれ?

 

ふと立ち止まる。

 

あれ?

 

どうやら、私、違う道に来たみたい。

 

必死で道を探した。

 

このまま真っすぐ行く方法も考えたけど

もう走る方向が分からなくなっていた。

 

必死で探した。

 

本を読んでみても

強烈に惹かれるひとに会いに行っても

はっきりとした答えは見つからなかった。

 

それでも声のする方、

かすかに光の見える気がする方へ

走っていった。

 

真っ暗すぎて

歩いたこともあるが

少し休んではまた走り出した。

 

 

傷付いて転び、罠に落ちた。
 
どんどん転がり落ちた。
 
息も絶え絶えだったが
それでも必死で駆け回った。
 
どこを歩いているかは分からないけど
ときどき美しい景色が見えた。
 
ときどき気まぐれな人がいて
飛行機にも乗せてもらえた。
 
でもそれは、私の飛行機ではなかった。
 
飛行機を降りたらまた走る。
 
走れなきゃ歩く。
 
体力が戻ったらまた走る。
 
そのうち、疲れ果てて倒れた。
 
 
失神していたようだ。
ふと、何のきっかけで目が覚める。
 
 
気づいてみれば
身体はボロボロ、意識は朦朧。
 
 
歩くことさえ忘れていたが
少しずつ思い出し、歩きはじめる。
 
歩けたと思ったら
少し走ってみる。
 
記憶をなくしていて
走るには誰かの支えが必要だった。
 
時には一人、時には大勢の支えをもらいながら
共に走った。
 
走り方を教わることもあった。
 
その場しのぎの方法論もあれば
一生の糧になる方法論もあった。
 
それでも身体はもう、以前のようには戻らない。
 
走るのにも、どうやら疲れたみたい。
 
 
今は誤魔化しながら
なんとか歩いている。
 
 
走っているひとが
どんどん遠のく気がする。
 
でも彼らは、どこへ向かっているのだろう。
 
真っすぐ走りぬけていく人もいれば
ずーっと同じところを周遊している人もいる。
 
喜びで走っている人もいれば
そうすべきと思い込んで走っている人もいる。
 
 
なるほど、歩くと確かに景色が良く見えるのだな。
 
 
自分のことも、良く見えるだろうか。
 
耳を澄ませば
自分の呼吸が聞こえるし
自然の音も聞こえるし
日差しの変化にも季節の変化にも気づく。
 
 
でもいったい私はこれでいいのか。
 
 
まだわからない。