月のうろこを食べるへび

マトモじゃないわたしがマトモに生きようとする奮闘記。夢の記憶、どこかで見た景色、ふと感じたこと。思うままに書いていきます。

人を突き動かすもの~世界遺産、熊野古道を訪れて~

「美しい景色を見ると心が洗われる」

 

景色は空気とセットで、

その場所の歴史、文化、エネルギーともセットである。

 

美しい景色を見ると心が洗われるのは、

視覚的に素晴らしいからだけではない。

 

美しい景色を見ているその瞬間は、

聴覚も嗅覚も皮膚感覚も刺激されているし、

空気や水などの身体に入るもの(味覚)、

さらには直感のような第六感も

その土地の影響を受けている。

 

つまり美しい景色は、

身体の細胞すべてに対して

威力を発揮していて、

だからこそ心も洗われるのだ。

 

熊野古道

 

先日、世界遺産*の一つである熊野古道を訪れた。

 

f:id:code888a:20151030005527j:plain

 

熊野周辺はもともと、伊勢よりも歴史の古い自然信仰の地。

 

そこで出会ったのは、

定年退職後に地元のホテルで働く一人の男性。

 

彼は熊野に生まれ育ち、

成人後は役場に就職。

 

この地に生き、長年の変化を知る人物でもある。

 

かつての熊野古道は、

過去の栄光など忘れ去られたように放置され、

石畳の上には数十センチも土が積もっていた。

 

紀伊半島の温暖な気候で育つ広葉樹の葉は

簡単に道を覆い尽くし、堆積してしまうのだ。

 

f:id:code888a:20151030012709j:plain

 

彼は土の積もった古道を放っておけなかったそうだ。

 

誰も賛同者がいなかったのだろう。

一人でコツコツと土を掘り、道を整備した。

 

一日に、距離にして2メートルずつ。

気の遠くなるような、地道な作業。

 

そんなことをして何になるのかと

笑う人もいたそうだ。

 

それでも彼は、

見えない力に突き動かされるように

作業を続けた。

 

そして十五年以上を経て、

彼の努力は身を結ぶ。

 

熊野古道

2000年に「熊野参詣道」として

国の史跡に指定され、

 

続く2004年7月に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として

ユネスコ世界遺産*に登録された。

 

2015年の今では、

日本のみならず世界からも旅行者が訪れている。

 

その話をする男性はとても嬉しそうで

心からの喜びに満ちていた。

 

 

彼を突き動かしたのは

何だったのだろうか。

 

それは、認められたいとか

称賛されたいというような

個人のエゴ的欲求ではないだろう。

 

おそらくは

心から愛し信じるものを守りたいという

本能的な欲求、魂の目的のようなものだったに違いない。

 

 

*「紀伊山地の霊場と参詣道」は、

文化遺産における「遺跡および文化的景観」として世界遺産に登録されている。

 

おまけ

 

「これはねー、もともと丸い一枚の岩だったんだよねー。」

と説明するその男性。

 

岩が風化すると、一部が朽ち、

一部が剥がれ落ちて

写真のような形状の石が出来上がるんだそう。

 

f:id:code888a:20151030013733j:plain

 

 

おまけ2

 

東洋のスフィンクスと呼ばれる獅子巌(獅子岩:ししいわ)。

 

男性の話によると、1500万年前から姿が変わっていないとか。

 

写真の左側には尻尾もあったのだが、

今は国道が通っていて尻尾は無くなっている。

(国道が出来たのは昭和38年)

 

f:id:code888a:20151030020756j:plain